連泊割を提案する前に。
比較部屋の数字から「想定」を作るシンプルな手順
「この部屋の売上を伸ばす提案をして」と言われたとき、連泊割(連泊で割引)はよく出てくる打ち手です。ただ提案を通すには、やったらどうなるか=稼働・ADR・売上の想定を、根拠つきで示す必要があります。今回その想定を作る一連の流れを整理できたので、シンプルにまとめます。
大前提:効くのは「割引率」ではなく「実勢価格」
以前「20%オフ」を打っても効かなかったことがありました。原因は、ダイナミックプライシング(AI)が実際には高い価格で売り続けていて、割引が"実際に払う価格"を下げていなかったから。看板に割引が付いても、お客様が払う額が下がらなければ需要は動きません。
想定の作り方:「割合は借りる、金額は組み直す」
対象の部屋に連泊割を入れたらどうなるか。同じホテル内で連泊割が回っている"近い部屋(比較部屋)"の実績を借りて想定を作ります。ただし、借り方にコツがあります。今回いちばんの学びはこれでした。
① 連泊比率 → そのまま借りる
連泊比率(予約の何%が2泊以上か)は「予約の形」を表す数字。これを決めるのは価格ではなく「何しに来たか」です。旅行で来る人は自然と数泊するので、部屋が高くても安くても形は大きく変わらない。だから比較部屋の数字をそのまま使えます。
② 稼働率 → 比較部屋を"天井"に、控えめに割り引く
比較部屋の稼働率を「目指せる上限(天井)」とし、対象部屋がそれより高単価なら低く見積もります。たとえば単価が約2倍なら、天井の4〜5割くらいに設定。どれだけ控えめに見るか(=控えめ係数)が、唯一の判断ポイントです。
③ RevPAR → コピーせず、自分のADRで計算
RevPAR(1室1日あたりの平均売上)は「円」で、中に価格が入っています。単価の違う部屋の金額はコピーできません。対象部屋の想定ADR × 想定稼働率で、自分で計算し直します。
想定ADRは「今、実際に売れている価格」で見る
閑散期で需要が弱く、最安値(下限価格)に張り付いているなら、その最安値が今の実勢価格です。連泊割はそこからさらに引くので――
想定ADR = 最安値 ×(1 − 割引率)
過去にたまたま取れた高い予約の単価は使いません。少数の結果でブレるうえ、今の実勢価格とは別物だからです。
さらにポイント。最安値に張り付いているときは、割引が"初めて"実勢価格を押し下げます。過去に効かなかった割引が、今回は効く可能性が高い――という前向きな根拠にもなります。
想定売上の出し方:2通りで検算する
売上は2つの掛け算で出せて、本来は同じ答えになります。
- 方法A: 売上 = ADR × 泊数 (泊数 = 稼働率 × その月の最大泊数。1室なら30泊)
- 方法B: 売上 = RevPAR × 最大泊数
AとBが一致すれば、稼働・ADR・RevPAR・泊数が全部噛み合っている証拠。提出前のセルフチェックになります。
まとめ(早見表)
| 見るもの | ポイント |
|---|---|
| 大前提 | 割引率より、実際に売れる価格(実勢価格)を見る |
| 連泊比率 | 比較部屋からそのまま借りる(価格と無関係) |
| 稼働率 | 比較部屋を天井に、控えめ係数(0.4〜0.5)で割り引く |
| ADR | 最安値 ×(1−割引率)。今売れている価格で見る |
| RevPAR | コピーせず、自分のADR × 稼働率で計算 |
| 売上 | ADR × 泊数(=RevPAR × 最大泊数)。2通りで検算 |
それだけで、提案の説得力はぐっと上がります。